笑顔

第17話

ユタカに振り向いて欲しいのに、やめたい。

ユタカに抱きしめて欲しいのに、やめたい。


お金を稼ぐ事をやめられない…。

どうすればいいか分からない…。


だけど、よく分からない男性について行くことは無くなった。コウセイが紹介してくれた店1本だけになった。


だけどそれだと、ユタカに言った200万は程遠い…。嘘つきだと思われたら、ユタカに嫌われてしまうかもしれない…。




──そんな時、私は知ってしまう。

この世には、お金を借りれるところが存在する事を。




私が見つけたその場所は、「10日1割」でお金を借りれる場所らしく。だから100万円借りれば、10日後にその1割の利子を含めた110万を返さなければならない。



「悪いけど初回の人は限度額30万でね」と、そのお金を貸してくれる男性の人は言っていた。


30万…。つまり10日後に33万返さないといけないってこと。

クリスマスイベントは、明日…。


それでもその男性は、「おねーさん、へぇ、あそこで働いてるの…」と、含み笑いをしながら「だったら100万限度でいいよ、どうする?」と言っていた限度額を変えた。



もちろん、10日間でそんなにも稼げるわけなんてない。だから30万で…と言おうとしたけど。



もし、100万円なら…。


私はきっと稼ぐことしかしないだろう。


店に行かずに、すむかもしれない…。


私はこれから、ユタカじゃなくてこの男性にお金を払い続けるって事だから…。


もうコウセイとも会わない…ですむ。



「利子が大きいから、今のところでは稼げないだろうし、こっちが紹介する店に行くことになるだろうけど」



コウセイの紹介してくれた店から…。



「それでもいいなら、100万」


「……そこは、本番はあるんですか」


「ああ…デリが希望? デリでも少し危ないプレイはしてもらう事になるよ」


「……」


「どうする?」



どうする……。



そんなの……。



ふと、コウセイの煙草を吸っている横顔を思い出した……。



もう何も考えたくない……。








クリスマスイベントは盛り上がっていた。ユタカが私の席についても、私は笑えなかった。財布の中は空っぽ。



帰り際、初めてユタカにエレベーターの中でキスをされた。



そのキスは全く幸せではなかった…。




コウセイが紹介してくれた店の店長に、辞める事を告げた。「どうして?」と驚いたように聞かれた。


違う店で働きますと正直に言った。どこの店と聞かれ、私はそれも正直に言った。

店長は怖い顔をしながら眉を寄せていた。




新しい店は、本番が無いと聞かされていた。けれども「悪いけどデリはいっぱいでね」と、私は本番がある店に連れてこられた。



ここはソープという、お店らしく。

安っぽい、お店だった。



気持ち悪い男性に抱かれながら、コウセイの言葉を思います。「どうでもいい女なら、安っぽいソープに紹介してる」という言葉を。




その日の夜、私は泣いた。



コウセイがくれたチョコレートを食べた。



それでも涙が止まらなかった。

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