第18話

それは、同じ店の女の子と店から出て駅の方に歩いているときだった。「マユっ!」と、彼が現れたのは。



「借りたのか…」



どうしてコウセイがここにいるのか分からない。無表情で、何も考えたくない私の腕をコウセイが掴んでいた。



「いくら借りた?!」



どうしてコウセイが、お金を借りたことを知ってるんだろう。誰にも言ってない。ユタカにも。



「なんでミドウんとこから借りてんだよ!?」



どうして借りた人の名前を知ってるんだろう…。



「俺が返すから、いくら借りた?! 言え!」


「コウセイさん…」


「闇金なんかに手ェ出すなよ!!」




無知な私は、何も知らなかった。


私が借りた金融会社が、コウセイが関わっている組織とあまり仲が良くない事を。


オナクラの店長が、コウセイに私の事をずっと些細な変化でも報告していた事も。


金融会社のミドウという人が、私を手に入れたがっていた理由も…。



「…もうホストクラブに行きたくなかったの…。これ以上ユタカに依存したくなかった…」


「だからって…」


「借りれば…お金を払い続ける人生で…何も考えずに済むかなって…」


「お前…」


「ごめんなさい…ごめん……」


「……いくらだ? あの日、使った金額か?200万あれば足りるか…?」


「もう会いにこないで………」


「マユ」


「ごめんね……」






その光景を見ていたソープの女の子が、後々「あの人、ナナワタリ組のケイシさんだよね?」と、私の知らない事を教えてくれた。



ミドウ組とナナワタリ組は仲が悪いと。

元々、私はナナワタリ組の風俗にいたらしい。


もしナナワタリ組が私をお金を払って連れ戻そうとしても、私がナナワタリ組にとって大事な女の子だと分かったら、あんた生きて帰れないよ、と。




「目が覚めたらドラム缶の中とか、あったりするから」と。

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