第6話

私の頭は賢くはない。

高校へ行っていない私の頭は中学卒業レベル。そのレベルだって、あんまり学校へ行けなかった私は下の方。

算数と数学の違いは何?

国語と現国の違いは何?とそれが分からないほど。



私は無知だった。

もうとっくに勉強をすることを諦めていた私にとって…。

バカな私が思いつくお金を稼ぐ方法は体を売るってことだけだった。



初めては好きな人と…。

そう思ってた。

けれども、ずっとこのまま続けばお金を使わない私に、いつかはユタカが愛想尽かすんじゃないか。

それに…、また〝ぽっきー〟って言われてしまう。


大好きなユタカは、ホスト。


〝自分自身が商品〟


その値段の設定は、……高ければ高いほど、いいんだから……。



居酒屋のバイトが終わって、ユタカの元へ向かおうとしている最中だった。空から、雨が降ってきたのは。


店の中は本当にホストの〝お姫様〟が少なかった。ユタカはすぐに来てくれた。

ユタカは「昨日はごめんね」と少し髪が濡れている私に、「使って風邪ひくよ」と、お店のタオルで髪をふいてくれた。


雨で濡れた髪を心配してくれたのは、ユタカが初めてだった。


──私に与えられる親切は、全てユタカが与えられる。だけどもそれにお金がかかることを分かってる。この優しさは、私はお金で買っている。



私はもっともっと、ユタカに優しくされたい…。


私だけを見てほしい…。


私にだけ、優しくしてほしいの…。





変なの。


この前までは、ユタカに会えるだけでいいと思っていたのに……。











────




これしか無かった。

夜の街で歩いている時、年配の男性に話しかけられることはよくあった。私はそれをいつも無視してた。けれども、今回、誘いに乗ったのは……




「私こういうの初めてで…。いくらくれるの?」


「3.4万ぐらいだけど。本当に初めてなら、上乗せして10万あげるよ」



それを聞いて、私は10万なら1晩1万で10回遊びに行けるとは考えず。

10万ぐらいのお酒を頼めば、大好きなユタカの喜ぶ顔がいつもより多く見れるんじゃないかって事だった。



父親と同じぐらいの歳の男性は、ホテルまで私を連れていく。


体を重ねた。

行為前、「キスはしないでください」と言った。



その人は私が体を売る行為が初めてだと思っていたらしく、処女だということに驚いていた。


最初は10万と言っていたのに、上乗せで全部で13万くれた。



気持ち悪かった。

だけどもこんなもんかって思った。

こんなので男性は喜ぶのかって。


男性がいなくなった部屋で、久しぶりにベットで眠る。眠る前も、私の頭はユタカだけだった。

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