第7話

ラブホテルというのは、とてもいいものだと思った。お風呂ある、ベットもある。朝食は無料。

男性と寝れば、朝まで泊まれるオプションつきなんだと知った。


私はいつもリュックサックを背負っていた。その中に入っているのは服とか化粧品とかで。

ほぼ家出状態の私は──…そのリュックの中が私の部屋だった。





その日の夜、私はシャンパンというものを注文した。見せてもらったメニュー表の中で1番10万に近いお酒を選んだ。


お店の中で何度か見かけたことがあるコールというものが始まった。

コールというものは何人かのホストが私とユタカがいる席に集まって、お祝い…みたいなのをしてくれる事で。


私は初めてのコールよりもユタカに夢中だった。

ユタカはお酒を注文する前、何度も「本当に大丈夫なの?」と心配してくれた。

そんなユタカの表情をずっと見てしまう。



「俺の可愛い姫さま。いつもありがとう」



マイクを持ってそう言ったユタカが私の肩を抱き寄せる。

その距離はいつもより近くに感じた。

ユタカが笑ってる…。

私のそばに居てくれる。



好き…。



これでもう〝ぽっきー〟なんて言われない。



幸福に包まれていた。




それでもこの世界にとって10万は安いものだと知ったのは、そう遠くはなかった。



私はメニュー表を見て知っていたはずなのに。もっともっと高いお酒は、いくらでもあることを…。

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