第21話

もう狭川くんには関わらない。

そう思っていたのに。

その日の学校の帰り道、私は彼に待ち伏せされていた。私の家の帰り道を知っているらしい狭川くんは、私が来たことを確認するなり「お昼はごめんね」と謝ってきた。



もう関わりたくないから、無視するように顔をしかめ狭川くんの横を通り過ぎようとした時、



「──…嘘なんだ!!」



と、狭川くんが大きな声を出した。

その声にビクっと、肩をふるわせた私は、狭川の方をつい見てしまう。



嘘?

何が…



「乙和の事で話がしたい…。時間作れないかな?」




乙和くん…?


狭川くんの顔は、いつもの笑っている顔じゃなかった。どこか真剣で、どこか悲しそうで。



「本当は俺、小町さんのこと好きとか、そんなんじゃなくて…」



申し訳無さそうに呟く男。



「小町さんと親しくなれば、乙和のことを知れると思ったんだ……。あいつ何も教えてくれねぇから…」



何も教えてくれない…。



「勇心も、まったく口割らねぇし」


「…」


「もう小町さんしかいねぇと思って…」



私しか…。



さっきまで〝はるちゃん〟と言っていた狭川くんはもういなく。



「なあ、小町さん」



目の前にいるのは、私と同様、何も知らない乙和くんの友達。



「──…あいつ、どっか、体悪いの?」

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