第15話
次の日、乙和くんは学校に来ていた。
横には、小山くんもいて。
私がいることに気づいているはずなのに2人とも私の方に見ることは無くて。
目は悪くないはずの乙和くんは色がついている眼鏡をかけていた。
数日姿を見せなかった乙和くんは、痩せたような気がした。
「おー久しぶり乙和!なんで眼鏡?」
と、クラスメイトの男子に話しかけられる乙和くんは、「久しぶり〜」と普通に笑いかけていた。
まるで私を他人のように扱う乙和くんは「わりーんだけど、休んで分のノート見せてくんね?」と、その男子生徒に話しかけていて。
その乙和くんの台詞に驚いたのは男子生徒だけじゃなくて、他の乙和くんの友達も、女子生徒も〝え?〟って顔つきをした。
みんな知っているから。乙和くんがいつも私のノートを見ていたことを。
だからみんなの考えていることが容易に分かった。
「え? 乙和カノは?なんで俺のノート?」
と、みんなが思っているであろう事を聞いた男子生徒は、離れて暗い顔をしている私を見て「ケンカでもしたの?」と首を傾げていた。
「いや?別れたから。もう借りれないでしょ」
そう言った乙和くんは、笑っていた。
私はもう、泣きそうだった。
どうして?
なんで?
私はまだ別れたことに、同意していない。
それなのに、教室の中でそう言い放った乙和くん…。
私はまとめいた。乙和くんが休んだ分、写せるように付箋もノートに貼っていた。
乙和くんが笑ってくれるために。
「え?!まじ?!」
「そうなの?」
「あんなにも仲良かったのに」
「喧嘩したのか?」
「…まあ、そんなとこ」
笑う乙和くんを見ていると苦しくて。
私は教室から逃げ出した。
どうしてという、気持ちが止まってくれない…。
廊下に出て走り出す。
そんな私を追いかけるように「小町さん!」と後ろから大きな声を出した男がいた。
泣いている私は、その人に振り向くことが出来なかった。
私を追いかけてきたのは、大好きな彼じゃない……。
「………わるい…」
なんで、小山くんが私に謝るのか分からない。
小山くんは何もしてないのに……。
「…ごめん……」
2回謝ってきた小山くんの方に、ゆっくりと振り向いた。予想通り、小山くんは泣きそうで苦しそうで、顔を歪ませていた。
「ごめんな…」
3回目…。
「…どうして小山くんが謝るの…、内緒にしてるから?」
「…」
「乙和くんに、言っておいて…」
「…」
「私、そこまでバカじゃないよ…」
「…」
「あれが、乙和くんの本心じゃないことぐらい分かるよ…」
「…小町さん」
「病院に行って…そのあと別れたいなんて、」
「……」
「〝どうして〟小山くんに言えるのに、私に言えないのかなぁ……」
「……」
「あんな、痩せ方…」
「……」
「…とわくん、どこか、からだがわるいの?」
その質問に、小山くんは答えてくれなかった。
けど、小山くんの顔を見れば〝肯定〟と同じなのに……。
「…いのちに関すること?」
けど、それに対しては、考えるような顔をしてから首をふってくれた。
「ちがうの…?」
「違う、でも、俺が乙和でも小町さんと別れると思う」
「……どうして?信用できないから?」
「違う。…小町さんの事が大切だから」
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