第13話

「小山くん」と、学校に来ていた小山くんに話しかけたのは、乙和くんが学校に来なくなってから3日がたった朝だった。



というよりも、乙和くんと連絡をとれなくて3日がたった。



私の呼び掛けに、私と目が合った小山くんは、少しだけ目線をそらすと、「なに?」と笑いながら再び私の方に顔を向けた。



その仕草に、友達でもなく親しくもないのに、〝何かを隠してる〟と感じ取ってしまった。

女の勘というものなのだろうか。

その〝何かを隠してる〟のは、乙和くん関係だとすぐに分かった。



小山くんは、乙和くんがなぜ学校を休んでいるのか知っている。



「乙和くん、どうして休んでるか知ってる?」



小山くんは私の質問に、さっきみたいな顔、逸らしたりや、言いにくそうな顔はしなかった。

いつもの表情で「乙和?知らないけど」と、とぼけてみせた。



何か内緒にしてる……。

私に言えないことなのだろうか。



「学校、来てないけど……」


「あいつ、2年の頃はしょっちゅうサボってたから。別に気にしなくていいと思うけど」


「そうなんだ…」


「連絡とか、乙和からねぇの?」


「うん、乙和くんと連絡とれなくて…」


「あー…」


「怪我酷かったのかな……」



不安で心配で、どうして?という思いが強く。

だってあんなにも優しい乙和くんが3日も連絡を途絶えるなんて、今までなかった事だから。



「や、怪我は平気なんだけど……」



私の落ち込む顔を見て、さっきみたいな言いにくそうな顔をした小山くんは、多分誤魔化すとか嘘をつくのが下手なんだと思う。



「……ごめん、俺の口からは言えない…。でも夜に乙和と会う約束してるから。小町さんのこと言っとくな」



案の定、そう言ってきた小山くんは、「…ごめん、」と謝罪を残すと私から離れていった。



乙和くんに何があったのか小山くんは知ってるみたいだけど、私には言えないみたいで。





私はスマホを開き、乙和くんとのトーク画面を見た。やっぱりそこには〝既読〟の文字はなく。



きっと、わざと私の連絡を無視してる乙和くん……。




そんな乙和くんから連絡が来たのは、その日の夜遅い時間だった。



『……はる?』と、乙和くんの声は、3日間、聞いてないだけなのに、凄く久しぶりに感じた。



大好きな恋人の声。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る