恋愛

第11話

「小町さん」と、乙和くんの友達である小山くんに話しかけられたのは、体育が終わった休み時間だった。


その近くに大好きな乙和くんはいなく。


乙和くんがいない時に小山くんに話しかけられたのは、これが初めてで。

少し小走り気味に近づいてきた小山くんは、「ごめん、今いい?」と、私に聞いてきた。



何か私に用事だろうか?と、うん、と、頷いた。



「ごめん、本当に悪気はなかったんだけど」



申し訳無さそうに謝ってくる小山くんに、〝何が?〟と心の中で思った。

小山くんが私に、悪いことをしたの?



「え?」


「さっき、クラスの奴が、乙和の頭にボールぶつけちゃって。あいつ今保健室にいるんだよ」


「…え!?」



ボールが、頭に?!

そう言えば野球をするって言っていた…。

その野球ボールが、乙和くんの頭に当たったということ?


保健室にいるって…。



「だ、大丈夫なの…?」



私に謝ってきた小山くんは、「打撲みたいなんになって…、気は失ったりはないけど、ボール硬いから…」と、眉を下げ。



硬い…。

硬いボールが、頭に当たった…。

乙和くんは大丈夫なのかと、不安で仕方なくて。

すごく申し訳なさそうにする小山くんに、保健室行ってくる、と言おうとした時だった。




「だからもう大丈夫だって!」



と、大好きな乙和くんの声が聞こえ。

私と小山くんは、その声の方へ振り向いた。

そこには教室の方に向かってくる恋人がいて。

その恋人の横には「マジでごめん!!」と何度も何度も謝るクラスメイトの男の子がいた。



それに気づいた小山くんが、「大丈夫なのか?」と駆け寄る。



私も、慌てて乙和くんに駆け寄った。


氷で額を冷やしている乙和くんは、「大丈夫だって、そんな強くなかったし」と、笑っていた。


笑う表情を見てホッとし…。

私に気づいた乙和くんは、「あ、はる。体育お疲れさま」といつも通りに笑った。



「とわくん、ボールあたったって…」


「ああ、見て。全然平気」



にっこりと笑った乙和くんは、額から氷を遠のけ、綺麗な肌を私に見せてくれた。

確かに外傷はなく。



「大袈裟だから、ほんと」


「でも、すごい音しただろ!」


「もう大丈夫だって」


「絶対病院いけよ!」


「分かった分かった」




何度も謝るクラスメイトの男の子に、乙和くんは笑いながら少し呆れた様子だった。



本当に、何事もないみたいだけど。



でも、当たったのは頭らしいから。



「乙和くん……」



不安気味に乙和くんの名前を呼べば、「…わかったよ、ちゃんと行くから。そんな不安な顔しないで大丈夫だから」と、乙和くんは優しく私の頭を撫でた。

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