第7話

パソコンを置いていた部屋から出て、ふわぁと、階段を登りながら、3階につき大きなアクビをした時だった。



「────助けてッ…!!!」



女の叫び声が聞こえたのは。

その叫び声は上から耳に届き、なんだ?と思い足を止まらせれば、4階から降りてきたらしい髪の長い女が顔を青白くし、この世のものとは思えないほどの血相をしていた。


俺と目が合い、何故か「助けて!!」と、服にすがりつく。

肩や足までガタガタと体を震わせる女は、ボロボロと涙を流しながら、もう一度「…助けて」と、今にも崩れそうで。



どうやら、ここの実験体である、異常性癖の1人から逃げてきたらしいけど。

生憎、人のお古には興味無いし、助けるつもりはない。



そうしてる間に、「どこ行くの?」と、知らない声が上から降りてきた。

髪の長い女はもう限界なのか、最大に身体を震わせ、ガタガタと膝が床についた。

けれども、俺の服は離さず。まるで盾のように扱う。



「あれ、初顔。凪の言ってた新しい人?それ俺のだから返してくれないかな?」



ハニーブラウンの髪…。

さっきの凪より歳は高そうだけど、明るい髪色に、笑っている表情からして、また愛想がいい〝少年〟だった。


けど、その少年は、得体の知れない何かを手に持っていた。

それは、動いてる。

──ゆらゆら、と。



「…どうぞ」



返すも何も、盗ったつもりはない。

けど、部屋に戻ろうとすれば、「助けて!!!」と、服を掴まれるからどうしようもない。



眠たいのに、と、舌打ちをしようとすれば、いつの間にか降りてきたハニーブラウンの髪の男が女の頬を、強く掴んでいた。



「だめじゃん、逃げちゃ」



楽しそうにクスクスと笑いながら、そのゆらゆらとうごめく物体を、口に近づける。



「ねぇ、新人くん、この子の手、押さえててくれないかな?」


「…なんで俺が」


「いいでしょ、暇そうだもん」



暇そうっていうか、眠いんだけど…。

溜息をつき、言われた通りに女が暴れないように両手首を後ろに固定すれば、「やめて〜〜ッ!!!!」と、大声を上げた。




「なあ、」


「何?」



動くものを口に入れようとすれば女が口を閉じたから、口を開けるように鼻を掴んだハニーブラウンの髪の男に問いかけた。



「それ何?」



女の口に入れようとしている、その動いてるのは…。

生きてる。

白くて細くて長い。

けど、ミミズみたいに大きくはない。



「ああ、」



にっこりと笑った男は、息を吸いたくてたまらず唇を開けた女の口に、それを突っ込んだ。



「寄生虫」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る