第6話

パソコンは、すぐに起動した。

モニターではなく、音声だけで繋がり、向こうの様子は見えないようになっていた。



『お疲れ様、どうだった?』



どうもこうも、風呂入って寝てたぐらいだから。何を言ったらいいのか。


パソコンの向こうで誰かが喋ってるけど誰か分からない。

だけどどこかサングラスの男の声に似ている気がした。



「さあ…ほぼ寝てたんで」


『まだ遊んでないの?今日の14時に、手配してたはずだけど?』



14時…

手配

ああ、女か。



「もっかい寝てたら15時過ぎていて…、確かに女の声聞こえてましたけど…」


『ああ、まだ実感湧いてない感じ?』



実感…。

まあ、そう言われたら、そうなんだろうけど。



「そうっすね…」



ぽつりと呟いた。



『みんな、初日はそうだよ。本当に捕まらないかって不安がってるけど、捕まらないから安心して』


「…」


『じゃあ、昨日何食べたか、お風呂は何時に入ったか、どんな行動をしていたか教えてくれる?』


「…なにそれ、ンなことすんの?」


『当たり前、それが僕らの仕事だから』



溜息をつき、昨日今日あったことを話す。音声からは『本当にずっと寝てたんだね』と、笑い声が聞こえ



『また明日、明日は忘れないように。電源落としておいてね』



『報告』は終わりらしく、言われた通りにパソコンの電源を落とそうとした時だった。



『あ、そうだ』と、思い出したように喋りだしたパソコンの方に、目を向ける。



『実感が湧かないのなら、〝彼〟に聞くといいよ。最近入ってきたばかりだけど慣れて〝彼〟も楽しんできてるようだから』


「…彼?」


『そう、2週間前に入ってきた実験体』



──…実験体…。

こいつらは、俺のこともそう呼んでるのか。



『彼は赤髪くん。一応、実験体同士の殺しは禁止しているけど、気をつけてね』


「…?」


『彼は、男でも体をぐちゃぐちゃにしちゃうから』

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