第79話

「晴陽、解放したってことは、もう月は晴陽のものじゃないんだよね?」


「ああ」


「ということは、俺のものでもいいってことだよね?」


「そうなるな」






なんの、なんの会話をしているの?私はもう解放されたのに。どうして目の前の扉は開かないの?

どうして私は流雨に捕まってるの?

どうして?なんで…



「やっ、…は、はなし、」


「ねぇ月、俺の彼女になってくれるよね?」



かの、じょ…?

何言ってるの?

なるわけない。


それに、柚李にも言われた。

〝女になるな〟って。

逃げられないからって。


それを思い出した私は、咄嗟に首を横にふった。「や、やだっ、」って。

泣きながら。

もういや、もういや。本当にいや。



「いやなの?」


「やだっ…かえりたいっ…」


「そっか、俺の彼女になりたくないの?」


「ならないっ、ならない…!!」


「でも俺はずっと、月と一緒にいたいな?」


「やだっ、、」



解放してくれるって、

言ったのに…。



流雨が、私を部屋の中に連れていく。

私に何度も何度もキスをしてきたそこのソファに連れていく、流雨──…。



そんな流雨は、私を後ろから抱きしめたまま、ソファに座り込む。固定された腕は離れてくれない。


「や、やだ…」と泣いても、「はあ、好き…」という流雨は私をずっと捕まえたまま。

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