第80話

助けを求めるために柚李を見ても、柚李はやっぱり何も言わなかった。


なんで……──?



ずっと泣く私を「かわいいかわいい」って何度も言ってくる流雨はどう考えてもおかしい…。





「晴陽」


そんな流雨は、私の背中に頬を当てながら、ハルヒの方に声をかけた。



「ん?」と、呟くハルヒは煙草を吸っていた。



「確か、俺らのチームは、総長と副総長に権限があるんだよね?」



総長?

ふく、総長…?

なに、何を言ってるの…。



「なんの権限?」


「かわいいかわいいお姫さま」


「ああ、確かに、総長に女がいない限り、副総長の女をそういう扱いができる、ってな」



ふう、と、白い息を吐き。



「じゃあ、月、お姫さまね。今日から。いいよね?晴陽」



その質問に、口角をあげ。

まるで、流雨がこう言うことを、分かっていたかのように。



「……お好きに?」



と、ハルヒは、見下し加減で笑い。



何を言っているか分からない私は、「…か、解放は、…」って聞く。



そんなハルヒは「俺は解放したでしょ? 解放されたかったら流雨にいいな?お姫さま」と、私の方に近づく…。



「…けどその子は流雨の女じゃない」



低く言ったのは、柚李…。



「何言ってるの?結婚するんだから俺の女なのは変わらない、彼女じゃないだけ」



「なんつー屁理屈だよ、流雨」とケラケラ笑う赤い眼鏡の男…。

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