第74話
「流雨、そんなグリグリしたら喋れないだろ?」
笑いながらそう言った御幸に、きょとんとした顔をする流雨は「え、なにが? 喋れてるよ?」とその動きを止めない。
喋ってるんじゃなくて、それは叫んでる…って言うんだぞ?という、呆れた顔をする御幸。
「そういえば、昨日、霧島を切ったみたいだな」
「きいたよ、ほんとムカつく。つめただけで終わり…。俺にやらせてくれなかった。絶対ナナが晴陽に言ったんだよ…」
ぐりぐり──…
たまに、骨に当たる音が響く。
「なんでもナナを助けるため?だとか。騒いでたらしいな」
「きしょくわるいね」
──…やめてくれっていう、叫び声が、止まらない。悲鳴が好きな御幸は、それを零さないよう聞いていた。
「カケルが怠けてる…か、まるで怠惰だね」
そう言った流雨に、御幸の顔が傾く。
「なんだそれ?」
「七つの大罪のひとつだよ」
「七つの大罪?」
「こいつは怒ってるから、憤怒かな?」
ふんぬ…?
「人間の中にある7つの欲望だよ」
ふーんと、顔をする御幸は、まだよく分かっていない表情で。
「欲望や感情に身を任せると、大きな罪を犯すちゃうよ?ってこと」
「へぇ」
「霧島の場合は嫉妬だね、知ってる?1番罪の重いのは〝嫉妬〟なんだよ?カインとアベルなんかまさにそれ。カインがアベルに嫉妬してアベルを殺しちゃう…」
「何喋ってるか全然わかんね、」
降参、と、両手をあげる御幸に、「聖書ぐらい読みなよ」と、面倒くさそうに肩をほじくる流雨がその男を解放したのは、もう気絶して、何も言えなくなった頃。
「月を選んだのは、霧島なんだって。いい仕事するじゃん、霧島。俺と月を会わせてくれた事には感謝するよ」
そう言った流雨という男は、ゆるしてあげる、とナイフを振りかざした。
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