第58話

用心深いらしいけど、用心深くやりすぎだな、と、心の中で笑ってしまった。


ということは月を選んだっていうよりも。

月だから選んだということ。


つまりカケルの本当の女かっていうのは、関係がなかった。用心深さが、月を選んだ。そういう事だろう?






──…流雨のザリガニが、一匹、殺されていた。

月はありえない。

そもそも、誰かがいるこの部屋に、女自身が怖がって来るとは思えない。


その時、部屋の中にいたのは晴陽と霧島。


学校から来た流雨が、俺の言葉で女の部屋にいく。殴られはしてたものの、霧島は部屋に入ろうとしなかった。

晴陽はいつもと変わらない。

それを見て、この女を選んだのは霧島だと分かった。




今現在、女を守っているのは実質ナナ。

殴られたものの、ナナに連絡ひとつもしようとしない…ナナの犬みたいな男。


こいつは、月が傷つけられているのを望んでいるのだと。





──精神的に俺の相手は出来ないらしい。それを聞いて思わずクスリと笑ってしまった。




あの流雨が、精神的にやばいで、すむはずがないと。




俺の〝ダイスキ〟な賢い晴陽は、どうやらナナを使って犯人をあぶりだしているようだった。




ザリガニを殺された流雨でもない。

もちろん〝ダイスキ〟な晴陽でもない。

晴陽が使っているナナでもなく。



残りは1人しかいないじゃんね?と。




まあ俺は、巻き込まれたくないんで傍観者で、よろしくお願いしますね。

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