第55話

雨に濡れていく地面の土は掘りやすそうだった。

「海に沈めれば良かったのに」と、そいつに言えば「海は暗いし冷たいし、遠い」とシャカシャカとスコップを使い掘っていく。



「こいつ元々何?」


「…ウサギ…学校の」


「で、どうやってやったの?」


「……石で…」


「ふうん」


「言わないでくれ…」


「霧島が学校のウサギを殺したって?それを七渡が証拠隠滅のために燃やして骨を埋めてるって?」


「…綾瀬」


「あいつ、キチガイなの?」


「……キチガイなのは俺だよ、バレたくないから燃やすなんて…しちゃいけなかった…」



そう言った七渡は多分、泣いていた。

でも雨のせいで、その涙が本物かは分からなかった。



「火葬とかあるし、別に良かったんじゃね、埋葬と変わらない」


「いや…」


「けど、また霧島がこんなことして燃やせばいいって思っちゃうかもしれない」


「……」


「お前の〝罪〟は重いよ」


「…そう、だな…」



七渡が、亡骸を素手で、掘った穴の中に入れていく。それはその光景をずっと見ていた。

もうスコップは使わず、手を使い土を元に戻す七渡は確かに泣いていた。



「なんで、霧島は…理由は?」


「…分からない…」


「ふうん…」


「ごめん、…ごめん…」




雨が降ってんのに。

地面に蹲り。

地面の底にいるそいつに土下座するように謝る男。



まだランドセルは背負ったまま。




「…線香じゃないけど、」



俺はそう言って、親から盗んだ煙草を取り出してそのまま置いた。火は付けなかった。雨で濡れてしまうから…。その代わりにライターを置いた。



「…綾瀬」


「内緒にしとく」


「………、」


「…霧島にも、言わない」


「わるい…」


「そのかわり、」



そのかわり。



「俺のお願い、きいてよ。柚李」








──次の日、学校で騒動があった。

飼育小屋いたはずのウサギが一匹いなくなっていた。血を数滴、残して。


〝誰がやったのか〟

その犯人探しは、何年経った今でも、未だにみつかってないそうだ。

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