unknown

第52話

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黒髪でパーマがかかっている、少し童顔が残るその男は部屋から出てくると真っ先に3つ並んでいる水槽へと向かう。



「女は?」



と聞く、御幸という男に「知らない」と返事をしたその男は1つの水槽を持ち上げた。



「知らないって…、お前死んでねぇだろうな?」



クスクスと笑う御幸に「興味無いよ、もう。あんな便器」と水槽を持って外に行こうとする。



「どこ行くんだろよ?」


「埋めてあげなきゃ、ずっと水の中じゃ可哀想…」


「ふうん?」


「花、買うから今日はもう戻らない」


「はいはい」



ひらひらと、手を振る、赤い眼鏡をした御幸。







そしてその男以外は、今のこの状況をなんとも思ってない表情をしている晴陽と。

ナナが入った部屋を見て少し不安そうにしている霧島という男。計三人。



暫くしてその部屋から出てきた男によってそこは4人目になる。


4人目は険しい顔をしていた。

シーンと静かな異様な雰囲気の部屋。



「…今日はもう無理だ、相手できる状態じゃない」


4人目、皆からナナと呼ばれる男はその3人に声をかけ。



「そりゃ、あれだけ叫んでたしね。俺はもうお腹いっぱいだからもういいよ?」



楽しそうに笑う赤い眼鏡の男。



「晴陽、御幸もそう言ってる、今日はいいだろ?」


「……お好きに?」



ふ…と、どうでも良さそうに笑った晴陽は、スマホを操作したまま。




「霧島、悪いけど包帯と、湿布と。ねえから買ってきてくれるか?」


「…わかった、ナナ、今日も泊まるのか?」


「ちょっと女が精神的にやばいからな」


「分かった、ナナの着替えも用意する」


「悪いな」


「いや、俺も…流雨、」


「…次は止めてくれ」



ナナの言葉に頷いた霧島は、それらを用意する為にたまり場を出ていき。




「晴陽」


「んー?」


「後で話がある」


「ふっ、怖いねぇ…」




嫌な笑みをする晴陽。



2人の会話を聞かながら、楽しそう御幸もクスクスと笑っていた。

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