第49話

あれは、小学…何年生だったか。

霧島が泣いていた。

どうしようどうしようって。

だから俺はそれを「燃やせばいい」って言った。今思えば燃やさなくていいし、もし杏李が同じことをすれば、きっと違う対応をしていただろう。


あの時は、子供だった。


霧島じゃない…


俺が。







寂しい思いをさせている杏李のことを思い出しながら、祖父に買ってもらった単車に腰をおろした時、スマホが鳴り。



宛名を見て、画面をスライドさせ耳と肩にスマホを挟み。「どうした?」と言いながら、エンジンをつけた。



『あー、ナナ? お前いつくんのー?』



陽気な声。御幸。



「今から行く」


『早く来た方がいいぞ? やばいことなってるから』



やばいこと?

そう思って思い浮かぶのは、月という女。

でもそれはもう大丈夫なはず。

晴陽は問題ない。

御幸もこうして電話を繋げてる。

じゃあ霧島?いや、そんなはず…。


残りは1人。キチガイ。けどあいつはもう月のことを気に入ってるんだろ?



「どういう事だ?」



〝中〟はもう、晴陽に任せれば──…。



『流雨の恋人? なんだっけ、シャーロット?が死んでてさ? 』



死んでた?


流雨のザリガニが?



『流雨があの子、疑っててさ?』



月?



『さっきからずっと悲鳴、聞こえてる』



悲鳴──…



「っ、止めろよ!!!」



俺の怒鳴り声は、住宅街に響き。



『いやだよ、だって俺女の子の悲鳴大好物だもん。ご飯何杯でもいけるね』




御幸の言葉を聞く前に通話を切り、スマホを元の位置に戻し、単車を走らせた。

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