第42話

後、何日ここにいるんだろう?

何日監禁されるんだろう?


警察、と思うけど鞄も無ければ、連絡手段もない。家族はお母さんだけ。そんなお母さんも仕事で1週間は帰ってこない。

もちろん、家に帰ってないなんて知らないだろうし。捜索願いなんて、出てないだろう…。

あるとすれば学校…。

でも学校は、捜索願いなんてしてくれるだろうか…。




私はいつになったら──…。



ぎゅう、と、シーツを掴み。



誰も来るな誰も来るな誰も来るな。

何度もそう思ったか分からない。

昨晩のことがあって、──柚李という男も信じられなくなっていた。


どうしてあんなことを。

あれは、襲われたの、襲われてないの。でも──…





震える体は、止まることを知らず。

──ガチャ、と、その扉が開かれた時、その震えは酷くなった。



「おはよう、月」



にこにこと、機嫌が良さそうに。

現れたその人。昨日ずっと私にキスをしてきた彼は、先程のここにいたハルヒのように腰かけると、シーツで顔を隠す私の頭を撫でてきた。



触らないで…っ。



「よく眠れた?」



来ないで……。



「昨日、一緒に寝るって約束、破ってごめんね」



ギジリと、音が鳴る。

流雨が近づいてくる。

上乗りになった流雨が、まだ電気もついていないその部屋で、私の手を掴んだ。


そのままシーツから顔を離してくる。


びくびくと、昨日の長いキスを思い出した私は、彼と視線が合った瞬間、ぎゅっと目を閉じた。



「大丈夫? ナナに酷いことされなかった?」



その瞼に柔らかくキスをしてくる流雨…。



「や、め」


「はあ、ほんと殺したい」


「る、…」


「今日もかわいい、愛してる」



流雨がそのまま唇を狙おうとするから、柚李が言っていた…。賢く、賢く、賢くなろうと考える…。


それでもこの人が怖い私は、喋ることが出来ない。


「…やめて…」と、それだけしか。





「煙草の匂いがする、」


そう言った流雨は、また私の唇を塞いだ。

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