第37話

「プライドって…」


「そうだろ、もしこの女が霧島を殺したらどうする?それでも女だから優しくしろって言うのかよ? 変な正義感を持ってるお前のせいでこっちが潰される」


「正義感…んなの持ってねぇよ。俺は…」


「だったら抱けよ」


「…やめろよ」


「この女が大人しくするようにすんだろ? 可哀想だから?可哀想だからなんだよ。俺らはそういうチームだろ」


「チームだからって全員が同じじゃないだろ」


「それそれ、見下してる感じ。まるで俺はお前らと違う〜みたいな傲慢さ」


「見下してねぇよ」


「自分と違って俺らの頭イカれてるとか思ってんだろ、それは見下してる、って言うんだよ」


「…晴陽」


「お前、俺らのことよく思ってないだろ?なんでここにいんの?」


「なんでって、お前が、」


「だったらカケルの所に行けよ、この女連れて。いいんだぞ?抜けても。別にお前がケンカ強くても俺は困らない」



ゆっくりと、女の頬をなぞる…──。



「…お前を裏切れっていうのか?」


「この女を抱かない時点でナナは裏切ってる」


「プライドな…、じゃあお前は色欲かよ、抱け抱け抱けって、」


「だから目的の為なら誰でも相手するって言ってんじゃん」


「…なあ、やめろよ、いきなり…。どうした?ずっとそんな事言わなかっただろ? 流雨に何か言われたのか? あいつが俺の事を嫌ってるのは知ってる、けど──…」


柚李ゆうり




女から、目線を、ナナ…いや、柚李と呼ばれた男の方へと向ける。


その目は〝総長〟と言われる、綾瀬晴陽あやせはるひの瞳。





「──やれ」

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