第36話

──────









その日の夜、深夜。



黒髪の男が部屋の中を見張る中、ノックもせず開いた扉に、鋭い目を向けた。


中に入ってきたのは、このチームの総長。

背が高く、アッシュ系の黒髪をし、いつもなにを考えているか分からない…どちかというと硬派な顔つきをしている男。



皆からナナと呼ばれているその男は、中に入ってきた男を見て「はるひ…」と声をかける。


晴陽という男は中に入り、寝静まっている女を見下ろしたあとベットに腰かけた。それを見た男が「おまえ…」と、声をかければ。



「何もしない」と先に言われ、渋々黙る、見張っていた男、ナナ。




「…他の奴らは?」


「みんな帰った」


「…流雨もか?」


「帰らせた」


「何しに来た?」


「女の寝顔、見に来た」



そう言って晴陽という男は、静かに、ナナという男が見張っているという安心感からか、寝息をたてている女に手を伸ばす。



女の頬にかかっている、髪を退けた晴陽という男の指先。




「…やれよナナ」


「晴陽」


「やれ」


「……しない」



〝やれ〟という言葉はどういうものか分かり、低く、否定するナナという男。



「喜ぶと思うぞ? 昨日普通に濡れてたし、…赤かったけど」



それは濡れてるんじゃなくて、出血で濡れてたんだろうと、キレそうになるナナ、だが。



相手が総長である晴陽ということに、冷静さを取り戻す。




「お前は…、お前らは、なんでそう女を抱けるんだ?」


「何が?」


「簡単に女を抱くなよ…」


「俺は抱けるよ、都合がいいなら誰でも抱ける。目的の為なら」


「はるひ…」


「お前はプライドが高すぎるんだよ」



薄暗い部屋の中、女をずっと見つめている晴陽は軽いため息をつく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る