yuri side

第24話

──柚李side






目の前にある光景に、一瞬声が出なかった。


──「どういう状況」とポツリと呟けば、赤い眼鏡をかけている御幸が「流雨が4匹目を見つけた状況」と、軽く笑いながら言う。



4匹目…?



部屋の中には、この状況をどうでも良さそうにテレビを見ながら煙草を吸ってる、ダークアッシュの髪の晴陽。


そしてスマホで動画を見て面白そうにしてる明るい茶髪の御幸。


突っ立ったまま、何も言わず缶コーヒーを飲んで──…焦げ茶色の髪を持つ霧島…。


何度も何度も角度を変え、無我夢中で黒髪のその女の唇を奪う…黒髪のキチガイ。



計5人。




ちらりと霧島を見れば、一瞬、霧島と目線が交わった。その一瞬の意味は、〝あとで報告する〟。この状況を詳しく分かっているらしい男。




流雨の下敷きになっている女はどう見ても昨日捕まえてきた女で。

女は流雨の繰り返される口付けに、顔を真っ赤にさせていた。それを見て「おい、」と流雨に声をかける。



けどそれを無視する流雨の重なりは止まらない。それどころか酷くなり。女の顔の赤さが濃くなっていく。



恥ずかしく赤くなってるんじゃない、苦しくて呼吸が出来ず顔を赤くさせてるのは、女の指先が震えているの事で直ぐに分かり。どう見ても酸素不足。



分かってるくせに、部屋にいたこいつらはなんで止めない…と、苛立ちがマシ。



もう一度「おい、流雨」と強くトーンを低くして言えば、やっとその唇は離された。



離れた瞬間、「っ、はぁ!っはあ…!」と大きく呼吸をする女にため息が出そうになる。


俺に向けられた目は、2つ。

涙を浮かばせ、俺の方を見て、肩で大きく息をしているその子と。


殺気が含まれる、黒くて大きい瞳。




はあはあ、と、まだ指先が震えている女が「ゆ、…りさ」と、呟いた瞬間だった。女を解放し立ち上がった流雨が俺の方に歩み寄ってくる。



「殺す、」



そう言った流雨が、俺の胸ぐらを掴もうとし──…

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