haruhi side

第20話

──晴陽side




その日はどんよりとした曇空。

太陽は出ていない。今にも雨がふりそうな空を見上げて〝そいつ〟を待つ。


俺は〝曇〟が嫌いだった。

自分の名前が〝太陽〟だからか。

自分が隠れてしまう〝曇〟が嫌いで。



その分〝雨〟はいい。


〝雨〟があがれば、そこには〝虹〟が出るから。


なぜなら〝虹〟は〝太陽〟が不可欠だから…。









「──…悪い、遅れた」



単車に乗らずここに来たのは、誰とも会わないようにするためか。──内緒、で来たらしい。


まあそれは俺も一緒。


誰にも知られないように、ここに来たわけで。





空を見るのをやめて、そいつに向かって鼻で笑う俺は、「女以外は待たねぇ主義なんだけどな」と、昨日いなかったそいつを見つめる。



「…あの子はどうしてる?」


「さぁ、遊ばれてんじゃない?」



制服の胸元の内ポケットから煙草をとりだし、そこに火をつけた。俺の言葉に顔をしかめたそいつは、「…何をした、」と手を握りしめていた。




ふう、と、白い息を出す。



「……昨日は俺が遊んだな、」



ぽつりと呟けば、…眉を寄せ、終わったように目を閉じる。



「関係ないって、言っただろう…」


「楽しかったよ、首絞めたら起きて。普通逆じゃん?って」



くっ、と、喉の奥で笑う俺に、顔を顰めたまま俺の方を見た〝そいつ〟は──




「解放してくれ、その子は本当に関係ない」




頭を下げてくる。


俺はそいつを見下すように煙草をくわえた。

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