miyuki side
第12話
────御幸side
「ああ、だめだよ。ソフィア。俺が大好きなのは分かるけど。こら、シャーロットも手をあげないの。石川さんちょっと待ってね」
流雨のいつもの光景を見ながら、煙草に火をつけていると、この建物の奥の方から出てきた男が、「…おい」と、低い声を出した。
革製の黒色のソファに足を組み腰をおろしている俺は、ちらりと、その低い声を出す男を見る。
奥──…、今日の21時頃、拉致した女を閉じ込めている方からやってきたそいつは、総長である晴陽に近づいた。
目だけを、その男、ナナに向けた晴陽は眉を寄せる。
「服ぐらい着せてやったらどうだ」
低い声。
そう言ったナナの、着ていたパーカーがなくなっていた。
鼻でふっ、と、見下すように笑った晴陽は「マシな扱いしてんだけどなぁ?」と、「なぁ流雨」と、水槽の中を見ている流雨を呼ぶ。
「もう、なに、邪魔しないでよ」
不機嫌そうな流雨が、晴陽の方をむく。
「気持ち悪いもん相手してんなよ」
「気持ち悪い?この子達のどこが気持ち悪いの?みて、石川さんとか小柄で可愛いでしょ?」
「晴陽、相手は女だ、手加減しろって言ってんだよ俺は」
流雨を無視して、注意をするナナに、全く聞く耳を持たない晴陽は、煙草に火をつけた。
無視する晴陽に、ナナは怒ってんのか「おいコラ」とソファを蹴る。
それを見た流雨が、〝石川さん〟を手に持つと、「ナナはお優しいんだよ。晴陽と違って。ね? まあ、ナナの気持ちは分かるけど〜? 俺も弄ぶからね? 敵国のお姫サマを虐めるの楽しそうじゃん」と、〝石川さん〟のお腹を見せてくる。
「流雨…」
「ねぇ、
と、流雨の大きい丸い目が、俺の方を向き。野郎と一緒に遊ぶ趣味はねぇから「じゃあ明後日予約」と言えば、ナナの舌打ちがその部屋に響いた。
「ということでお優しいナナは、明明後日ね。壊れちゃったらごめんね?」
ふふ、と、笑った流雨は〝石川さん〟というザリガニを、水槽の中に戻した。「はあ、今日も真っ赤でかわいいよソフィア」とうっとりとしている流雨と、俺に目を向けたナナは、「……くさってる」と、呟いたあとその部屋から出ていく…。
「ナナって、暴走族、向いてないね。」
そんなナナが去った後、流雨の低い声が、響き。
「辞めさせるか?」
それを聞いた晴陽が、白い煙を出しながら言い。
「俺は、晴陽の指示に従うよ」
俺は、にっこりと笑った。
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