第5話

ハラハラが止まらない。

え、すごく、帰りたい。

どうしよう、このまま1人で帰った方がいいのでは?と思って辺りを見渡せば、何かの文字がある旗があったり、特攻服みたいなものもあったり、吸っててと言われて、当然のようにある灰皿を見たあと、──帰ろう、と思った。



全く〝平和〟じゃない。



そう思って立ち上がろうとすれば、ズキ、と右足首に痛みが走り上手く立ち上がれなくて。


もう、最悪…と思いながら眉を寄せ、ソファの背もたれを頼りに立ち上がろうとすれば、その方から──死ねコラァ、!!と、怒鳴り声が聞こえ、て。



──きゃあああっ、と、女の子の叫び声も聞こえ。



それにびく、と、肩を震わせた私は、その場から動けなかった。




外で何かが起こってる、それを瞬時に分かった私は、これ、外に出ない方がいいのでは?と思って──…




え、どうしよう、

どうすればいいの?

そう思っているうちに、1分、2分と時間が過ぎていく。



激しい怒鳴り声。

叫び声。



「やめろっ、」


「女は逃げろ!!」


「卑怯だぞお前ら!!」


「ぶっ殺せ!!」





喧嘩?


喧嘩、してるの?



外の世界は、何が、起こって…




どうしようどうしよう。



女は逃げろって、聞こえたような気がしたけど、この中に逃げる場所はないんだけど…。


な、なにか、この扉から出るのは不味い気がする。




から、





プレハブの、さっき能天気金髪が探していた棚の奥に窓があるのに気づいた私は、どうにかしてそこから逃げろようと、足を引きずりながらその方へ進んだ時、




──…そのプレハブの、扉が、開くような音がして。






まず、い、と、冷や汗を流しながら、その方に目を向けた時、




「──オンナ? 」と、そのプレハブの中で、低い声が聞こえ…





「オンナいた、霧島きりしま〜!オンナいた!」




その人物、黒髪に少しパーマがかかっている男が外にいる誰かに、話しかけていて。


瞳の大きい、その黒髪の人は、「これって捕まえた方がいいの?」と笑いながら中に入ってくるから。



戸惑いしか、ない、私は、痛む足をつかって咄嗟に後ずさる。




誰。




流雨るう、何だって?」



と、その時、また全く知らない男が中に入ってきた。その男の顔には、血が、付いていて。


その顔を見た瞬間、私の顔が強ばる。




「オンナいたけど、どうするの」


「オンナがいるってのは聞いてないな」


「つかまえる?」


「確かここは、総長のオンナしか入れないキマリがあったはず」


「そうなの?もしかしてあれ?昔 ハヤった族の姫〜♪ってやつ?」



クスクスと、バカにしたように笑った黒髪パーマ、ルウと呼ばれたその男は、私をチラッと見つめると「おもしろそ、」と、まるで見定めるように私を見てきて、



何、言ってるの?




「連れていこうか、霧島」


「そうだな」


「ってか今までオンナを隠してたってこと?」


「そうなるな」


「やるね、それほど大事な〝姫〟ってこと〜? 可愛いことするねぇ」




クスクス、笑うことをやめない、ルウは私に近づいてくると「名前は?」と聞いてきた。

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