第4話
帰ろう、瞬時にそう思った。
目の前に並べられている大量のバイク、そして派手な男たちや、すごく派手な女の子もいる。
そこはそういう〝たまり場〟なんだと。
「あの、やっぱり帰り、」
「あ、もしかしてお姫様抱っこが希望?それなら早く言ってよ〜」
「え?!」
ぱ、と、立ち上がった彼は、慣れた手つきで私の背中に腕を回すと、膝の裏にも腕も差し込み。
ふわ、と、私を宙から浮かせた。
まって、まってと、!
「ああの、か、帰る、」
「門限やばい?ごめんすぐ帰すね!」
そういう意味じゃない!!
ここは〝暴走族のたまり場〟でしょう!?
今朝のニュースを見て、暴走族というのは警察沙汰になっていることを知っている私は、その腕の中で暴れようとしたけど、
「お!なんだその女!」
「ちょい事故〜」
「女連れ?」
「なんつー登場だよ」
「お前いつ王子様になったの、特攻野郎」
「あ、なあなあ、絆創膏どこ?怪我してんのこの子」
「つかお前、今日暴走だぞ?」
周りに現れたギャラリーたちに、身を縮こませた私は、「何あの女」と冷たい目を向けられる、ギャルの女の子たちから見えないように顔を隠した。
ひぃいいい、
なんでこんなことになってるの?!
トイレットペーパーなんて、買いに行こうと思わなきゃ良かった!!
「絆創膏?」
「あと湿布も」
「んならカケルんとこじゃね?」
「そ、俺女の子手当すんの初めて上手くできるかな〜」
「女連れ込むのか? カケルの女以外禁止だろ?」
「緊急事態はOKっていう決まりもあるよん」
すごく能天気にしている人は、誰かと会話をしながら、奥へ奥へと進んでいく。お願い直ぐに帰して。帰して帰して!!
そう思っているのにチキンの私は、顔を上げられず、抱えられたまま、奥の方にあるその小さなプレハブような建物に入るその人に従うしかなかった。
入った瞬間、その部屋に誰もいない事を確認した私は、「きいてない!」と、それを叫ぶ。
いきなりと私の叫び声に「ぅわぁ、びっくりした、どしたの叫んで」と、そのプレハブにおかれているソファに私をおろした。
「あなた、暴走族なの?!」
「え、うん、そうだよ?」
キョトン、としている彼は、「救急箱どこだろ?」とそれを探すために、端の方にある棚へと向かっていく。
「…知ってたら意地でも来なかった…」
「あははっ、だから俺らは平和主義だって!バイク走らせるだけだし!」
人の気も知らないでケラケラと笑っているその人は、「もっとやべぇトコ、あるから!」と、棚の引き出しを開ける。
やべぇ、って、〝暴走族〟ってだけでやばいって、どうして分からないんだろう?と思って、私は肩からちいさなショルダーバックを外した。
「ん〜、どこだろ?、あ、暇なら煙草でも吸ってて待ってて!」
煙草なんか吸わないのに、当たり前のようにそう言ってきた彼にため息を出しそうになった時、だった。
プレハブの外から、荒っぽい、爆音のようなバイクの音が鳴り響いた。
その音に反応したらしい、能天気の金髪の人は、「…?」と、そのプレハブの扉へと視線を向ける。
「嫌な音…」
ポツリと、その人が呟いた時だと、思う。
「────…カケル!!!」と、その扉が慌ただしく開き。どこからどう見ても戸惑っている彼は、「おい、カケルは?!」と、救急箱を探している能天気の金髪の彼に、話しかけ、
「いねぇ、何があった?」
私と喋ってた時と違い、低く、声を出した金髪の彼は、〝カケル〟という人物を探しているその人に近寄る。
「〝アイツら〟が来た!潰す気だ! 暴走ん時に狙ってきやがった!」
外からは、爆音。
怒鳴り声。
〝普通〟ではない、その音は──…
「チッ、クソが、──…てめぇはカケルを探せ。俺が出る。──…ごめん、すぐに戻ってくるからここに隠れててね!」
舌打ちをしたその人は、にっこりと私に向かって笑ってきた後、そのまま外へと出ていこうとする、から。
まって!1人にしないでと、思ってるうちに、──…バタンと閉められた扉にため息しか出なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます