第2話

お酒のだらしない父と離婚してから、私を養うために母はこうして働いている。


私はそんな母が好きだった。例え全く家にいないとしても、好きということは変わらない。


まあ、そのおかげで昔から何でも1人ですることを覚えたし、料理と家事もできる。

その家事のひとつの朝食で使った食器洗いをすませたあと、学校へ行くために用意を始める。




私の頭の良さは普通だった。

別に良くもないし賢くもない。

まあ、普通より少しだけ下の位置にある高校に通っている私は、──とりあえず、普通なんだと思う。




成績も悪くない、運動も平均。

50メートル9秒前半。





そんな私が、〝普通〟じゃ無くなったのは、その日の夜の事だった。

ただトイレットペーパー買いに行っただけ。それだけだった。本当に、それだけ。



その日の夜から〝あいつら〟に捕まった私の、地獄の1週間が始まる──…





「────…アブねぇ!!!」




始まりは、1台のバイク。

夜道に光る、眩しい光。


大きな、音。



ああ、轢かれた、と、思った。




けど、実際には轢かれてはいなく、間一髪のところでギリギリに避けることが出来たらしい。


見通しの悪い、曲がり角のそこで、驚いてしゃがみこんでいた私の元に「大丈夫?!」と近づいてきたのはノーヘルの男だった。

その男は夜の時間でも分かるほどの金色の髪をしていた。

不良、ヤンキー…、どこかの制服…。



転んだままの原付を放り、しゃがみこむ私に駆け寄ってくるその人は「け、怪我は?!」と、私の視線に合うように膝をおり。




心の中でまだ驚いている私は、「あ、だ、大丈夫…です、」と、返事をした。



「ごめんね、煙草吸おうとしてあんま前見てなかった、ほんとにごめん、立てる??」と、すごく申し訳なさそうにする男の人は、私に手を伸ばしてきて。



「あ、はい、ほんとに大丈夫ですから…」



アタフタしている私は、男の人のその手を無視して、立ち上がろうとしたけど。


しゃがみこんだ時にどうやら足を捻ってしまったらしい、「いたっ、」と、眉を寄せた私はふらついて、咄嗟にその人の手を持ってしまった。



「やっぱ怪我してる!? どこ痛い?!」



私を軽々とキャッチした彼は、戸惑いながら「あ、手も怪我してる、転んだ時?ほんとにごめん」と申し訳なさそうな顔をし。



そう言われて見てみれば、地面に手をついた拍子に少しだけ手のひらがじんわりと血で赤くなっていた。



「ほ、ほんとに、大丈夫ですから…」


「え、てか、足も?! ごめん、っ、まじでごめん!歩ける?!」


「あ、の…」


「病院とか行く?!」


「…ほんとに大丈夫…」


「行った方がいいよな?!」



じわじわと、足が痛む。

正直、歩けそうになかった。

怪我をした直後だからか。



本当なら不良みたいな人と関わるのは、と思うけれど。


いや、やめておこう。


正直、怖い…。



足を引きずってでも自分の足で帰ろうと思っていた矢先、「あ、そうか、たまり場で消毒すればいいのか!俺頭いい!」と、意味のわからない事を言い出した。

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