第82話

「──…それは違う、じいちゃんはあんたがそうならないように、シイナに子供を産めって言ったんじゃないのか?あんたに、他に大切なモノを作らせるために…」


「…無駄だな、もうピルを飲ませてる。ガキはいない。それにあの人は女をそういう扱いにはしない、お前が1番分かってるだろ」


「タカさんが言ってた…。ケイシさん、自殺するつもりじゃないかって」


「……」


「死ぬつもりなのか」


「……お前、敬語はどうしたよ」


「やめてくれ、あんたはもう俺の上司なんだ…」


「……」


「やめてくれ…」


「やめて、シイナと向き合ったとして、もし俺がシイナを好きになったらどうする? 」


「…」


「お前は指をくわえて見てるだけか?」


「……あんたがシイナを好きになったら、大事にしてくれるって分かってる。…マユさんみたいに優しくしてくれるんだろう?」


「……」


「…あんたが言ったんだ、生きているだけでいいって。あんたが俺に教えてくれたんだ」


「……」


「教えてくれたんだろ?」


「……」


「それなのに、あんたが死ぬ考えなんかするなっ!」


「……お前、」


「その考えは、違う…」



ふ、と、息をついたケイシは、「…俺に復讐をやめろってか?」と、静かに呟く…。



「ケイシさん……」


「それは無理だ、ずっとこの時のために生きてきた……」


「……」


「マユは俺のせいで死んだ…、俺が関わってたばっかりに……」


「……」


「好きになった俺のせいなんだよ」


「……」


「死んでマユに会って、謝りたい……。そう思うのは間違ってんのか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る