第56話

安心させたいのに、シイナは泣きそうな顔をする。


怖い、苦しい、寂しい。

シイナの感情はそのうちのどれなのか。


目が見えなく、ずっとここに1人で。

ここに帰ってくる男は、シイナを愛す事は無い。



「だって……ユウリさん、気づいてるでしょう?」



気づいてる…。



「わたしが、ケイシさんに…抱かれてること…」


「…シイナ」


「……お願いだから…1人にしないで……」




何も出来ない無力の自分に、腹が立つ。

どうすればいいのか。

どうすればシイナは安心するのか。

シイナを救うには……。




抱かれていることには、なんとなく気づいてた。

シイナがベットで眠っているその日の朝、シイナの瞼は腫れているから。

前の日の夜に、泣いたのだろうと。

泣きながら抱かれてる、そんな場面が脳裏に浮かぶ。





昨日、あの人はシイナを抱いてから、2番目の女の家に泊まった…。


けど、じいちゃんが信用してる男…。




「しねぇよ…絶対、朝に会いに来るから…」

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