第54話
男は胸元のジャケットから煙草を取り出すと、さっきタカがしていたようにそこに火をつけた。
深く吸い込み、
「…ミソラんとこ向かえ」
ふう、静かに息を出しながら低く呟く。
「店ですか? 家ですか?」
そう聞いたタカに「家」と、また煙草を口にくわえた男は窓の外を見た。
「りょーかいっす、…お前そこ変われ、俺が運転する」
運転する俺と交代になり、俺が助手席に座ってから車が発進した。ケイシが住むマンションから国道に出て、シーンとした無言の車内では煙草の香りがよく漂う。
20分ほどたったころ、車はとあるマンションの前につく。そこは今シイナが住んでいるところ同様に、背が高い。
「もうお前らは帰っていい」
「迎えは?」
「6時」
「了解っす」
ケイシは煙草の火を消すと、車から出てそのマンションのエントランスへと入っていく。
「交代、このマンション、たまに来るから覚えとけ」
また運転席に戻り、国道に出て来た道を走る。隣でスマホをいじってるタカは、「ケイシさん今日は泊まりか…」と、時計を見ているようで。
──…泊まり。
「ミソラって誰ですか?」
気になっていることを聞けば、「ケイシさんが育てたキャバ嬢」と、あっさりと答えが帰ってきた。
キャバ嬢?
「ケイシさんの2番目の女」
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