第53話

信用できる人間…。

じいちゃんが、信用してそばに置いている男。



好きな女をソープに沈められ、病気にされた…。衝撃の事実に、何も言えなく。


少しの沈黙の後、思い浮かんだのは、ケイシも同じように女を売り物と言っていたこと。



「そんな大事な話、俺にして良かったんですか」


「…まあ、普通なら俺ケイシさんに殺されるけど。お前には言っておいた方がいいだろ。絶対俺から聞いたって言うなよ、言ったらマジで殺されるから」



そう言ったタカは、煙草の火を消した。



「…何でケイシさんはこの組で借金した女を売ってるんですか、その…亡くなったケイシさんの彼女と同じ事をしてるんじゃないですか」


「してねぇよ、あのシイナって子も、ちゃんとしたところに売る予定だった。あの子は大人しそうな子だから…とか、ケイシさんは考えてたよ、…無駄になったけど」


「…」


「お前、何も知らないでワーワー言ってきたからな」


「…」


「つーか、ここだけの話、なんとなくだけど俺分かるんだよな。あの人がシイナって子とケイシさんを引っつけた理由。ケイシさんは分からないって言ってたけど」


「…」


「多分ケイシさん、マユさんの後を追いたいと思ってんだよな」



マユ…。

亡くなったケイシの女…。




「お前だって、すげぇ好きな女が死んだら死にたくなるだろ」


「…」


「マユさんの変わりに、守りたい女を作れば、ケイシさんは自殺しねえって思ってたりしてな」


「……それなら、シイナが会う前に死んでんじゃないですか?」


「だからそれは、ミドウの復讐心があるからだ」



復讐心…。




「あ…、ケイシさん戻ってきた、お前、今のこと絶対いうなよ。言ったら殺されるからな、俺が」



ミラーでケイシが帰ってくるのを確認した後、タカは窓を閉めた。


後部座席の扉が開く。

「お疲れっす」とタカの言葉を無視し、だるそうに車の中に入ってきた男。




そんな男からは、かすかにシイナの匂いがしたような気がした。

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