第51話

目覚めたそこは、いつもいたソファの感覚では無かった。ここは1度来たことがある、少し煙草の匂いがあるそこは、どう考えてもケイシのベットの上だった。


私は確かに、ソファの上で抱かれてたはずだった。そのまま意識を途絶えたのは覚えている…。

それなのにどうしてベットの上にいるのか。

そんなの誰かが運んでくれたとしか考えられず。





「──…シイナ? どこだ?」





ユウリかな?と思った。

だけどユウリの戸惑っているわたしを探している声を聞き、その線は消える。

ここに運んだのがユウリなら私を探す必要は無いから。

だとしたら、私をここに運んだのは1人しかいない。







「……、悪い、寝てたのか?」


ユウリがベットのある部屋に来たようで…。ベットの上で上半身だけを起こしている私に話しかけてきた。



「……ユウリさん」


「飯持ってきたけどもうちょい寝るか?」


「…いえ、起きます……」



正直、まだ寝室から洗面台までは曖昧にしか覚えてないから。ユウリに優しく手を引かれながら洗面台でできる限り身を整えた。



「…いつもあそこで寝てるのか?」



ユウリにそう聞かれ、やっぱり運んだのはケイシなんだと思い。



「いえ…、……」


「…そうか…」


「すみません…、今日もありがとうございます…」


「…仕事だから」



ユウリは夕方にも来てくれた。


だけどその日の夜、ケイシは帰ってこず私は定位置になっているソファの上で眠った。



だけど次の日は帰ってきて、煙草を吸ったあとシャワーを浴びに行ったケイシは、黙ったまま私をソファの上に押し倒す…。



ケイシはもう、何も喋らない…。

だけど近づいてきた足音とかで、ケイシと分かる私は、黙ってそれを受け入れた。



やはりまだケイシを受け入れるのに痛みがあって、泣きそうになりながら顔を歪ませる…。




次の日の朝、私はまたベットの上にいた。あのままソファの上で眠ったはずなのに…。



その日の夜も彼は私の体を押し倒した。

事を終え、もう何もしたくないとソファで寝転んだままでいると、その人が私の体にふれ。

体が宙に浮く。

うっすらと目を開ければ、やっぱり何も見えないけど、私が彼の腕に抱えられていることは分かった。



そのまま数歩ほど歩き、柔らかいその場所に下ろされる。私が起きていることに気づいているらしいケイシは、「むこう、掃除すんのに邪魔だ」と呟き。




……どうやら私は、ケイシに抱かれるとベットの上で朝を迎えるようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る