第49話

ユウリとは…、ユウリが教えてくれる時しか、ふれていない。

やましい関係なんてあるわけない。

分かってるくせに…。



「…ひど、い…事を言うんですね…。ユウリさんを私から離したのは…あなたなのに」


「そりゃそうだろ、お前は俺のだろ?」



俺の。

書面上では…。



「……そうですね…」



足音がする…。

それはどんどん近づいてくる。

私は逃げることが出来ない。



「私はケイシさんのです……」



その人が、私の目の前に来る。

そんな気配がする。



「……ケイシさんの、…だから、」


「俺のだから?」



ケイシさんのだから…。



「…、ユ、ユウリさんを、来させないようにするのは…やめてください……」


「……」


「ユウリさんを奪わないで……」




24時間、暗闇で。

ユウリと会う時間だけが、私の救い…。

私のヒカリ…。



「……わ、わたしが、ユウリさんと関係をもつことは、…絶対にない……」



視界が揺れた、

また、まただ。

真っ暗でなく、何かが揺れる…。

ユウリの事を思うと、目がおかしくなる。



「……そうか」




────その瞬間、私の体は横に倒された。

ソファに、私以外の重みが加わる。


ドクドク、と心臓が早くなり。


やられる。

抱かれる。

またあの痛みが起こる…。


ユウリ……。




「俺が1回優しくしたからって調子のんなよ」



低い声に、全く優しくない声に、…そんなことない、と、首をふる…。



「ケイシさん……」


「お前は優しい男だったら誰でもいいのか?」


「…ちがい、ます…」


「もう1回、優しくしてやろうか?」




私は、おかしいのだろうか。

この人が怖いのに。

彼の視界の中に私がいると思えばほっとする。


──…私の存在が、確かにここにあるから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る