第37話

家を出ていく前、母親が俺の元へくる。「お父さんはああ言ってたけど、いつでも帰ってきて…」と。

杏李と同じように泣きそうになりながら。



「…止めないの?」


「止めたいよ。ほんとなら今すぐに縛り付けたい…」


「ごめん…」


「…行ってらっしゃい、気をつけてね」



もうここには帰ってこないかもしれないのに。













────








「……怒ってる?」


そう、柚李の母親が不機嫌な男に聞く。「…当たり前だろ」と、ずっと眉を寄せ、怖い顔をする柚李の父親…。



「怒れよ、お前も…」


「…柚李は間違ったことをしないよ、優しい子だもん…きっと大丈夫」


「…」


「それに、昨日あれだけ桃李に殴られたからって、女の子を諦めるそんな簡単な気持ちなら桃李の場合、もっと怒ってるでしょ?」


「…想世」


「親子そっくりだよ…」


「…」


「大切なものになると、一直線になるところ」


「……それでも、組に入るからには危険なのは変わらない……」


「桃李…」


「クソ……、なんで……」




男性は、スマホを手に持つと、どこかに電話をかけ始めた。誰?と聞く女性に、「とーさん」と口にする桃李と呼ばれた男性は、「俺だけど…」と電話を繋げた。





電話の向こうの男性は、こうなる事をわかっていたようだった。

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