第35話

「っていうか、あのナナが俺に会ってまで相談してくるほどなんだから、自分でも分かってるんじゃない?」



どちらかというと、大嫌いだった流雨。

昔…つるんでいた男たちの中で、今はもう流雨しか連絡を取り合っていない。

友達という友達も…──今は消えた。


自分でも分かっている。

流雨に相談をするほど。



自分の頭を抱えた。

父親に蹴られた顔が痛む。




「一つだけ、…分からないながらに考えてたことがある」


「うん、なに?」


「俺は今、口出していい存在じゃない」


「その女の子にってこと?」


「もしかしたら…これで流雨と会うのが最後かもしれない…」



流雨が俺の方を見る。

俺の言葉に、何かを感じ取ったらしい。


流雨とは住む世界が違う…。




「…それは、どうなの。だってナナのところは……」


「分かってる…」


「…分かってるって、許されないでしょ…」


「……」


「反対すべきなのかな」


「……」


「…そっか、だから俺に会いたいって言ってきたんだ…。最後だから」


「お前のおかげで決心がついたよ」


「……うん」


「じゃあな、…会計しとく」




立ち上がる俺に、「…ナナ」と、声をかけられる。




「またその子に会わせてね」




もう会わないって言ったのに。

わざとそういってきたのは、昔の流雨とは違うからか…。

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