第33話

──────yuuri side




顔が痛む。つーより体が痛い。

こうして座ってても、出来るなら立ちたくない。

多分母親が止めなかったら、顔の骨…いや何本か体の骨が折れてただろう。



「何その顔…」



男らしくない、どちらかというと女顔のそいつの顔が、俺の顔を見た途端歪む。自分の鋭い目とは違い、丸い目をした二重が印象的な──…友達…。


久しぶりに会ったそいつは、昔と変わらない。



「…蹴られた」


「誰に?」


「親」


「…え、顔を蹴られたの?」


「そうだな」


「…どうやって…」


「寝てたら、起きろって言われて蹴られた」



とあるフード店。先に到着していた俺は珈琲を頼んでいた。席についた女顔のそいつも、「ホットコーヒー1つ」と、慣れたように頼み。



「まさか俺に話があるっていうの、親と喧嘩した愚痴じゃないよね?」



少し呆れたように、話す。



「違うわ」


「じゃあ、どうしたの。ナナが会いたいって……、るな関係?」



ナナ…。

俺の苗字から〝ナナ〟と呼んでくるのは、もうこいつしかいないだう。


月…。

好きだった女。

今はもう、違う男の女。

もう二度と俺の元に来ることは無い。

前にこいつとも取り合った。

そう思えば、随分昔のように感じる。



「いや…」



そう言って、ぬるくなった珈琲を1口飲む。


目の前にいる男、流雨るうが頼んだ珈琲も、到着し。



「じゃあ何?」


「相談、っていうか」


「相談?」



ナナが俺に?と、目を丸くする。



「その相談って、その顔の怪我と関係あるの?」


「だな、」


「なに?」


「俺、前にマンション借りてただろ。じいちゃんに。その金この間まで返してたわけ」


「うん。月の時のだよね?」


「父親の実家…、に、出入りしてたんだけど」


「組?」


「ああ…」


「それで?」


「女がいたんだ…」


「え?」


「2個下?多分」


「……」


「その女に会ってたのがバレて、」


「……」


「蹴られた」



軽く笑うと、流雨は少し眉を寄せ、珈琲を口にする。

カップを置き、「それは…」と、話を続ける。



「どういう女の子なの? もうナナは月の事を忘れたの?」


「身内のせいで借金した子。売られるっぽい…」


「だから親が許さないんだ」


「別に月のこと忘れたわけじゃない、つーよりも、逆で」


「逆?」


「あの子が月と重なってる。逃げられなかったあの時と…」


「…」


「それでも関わっちゃいけない相手っていうのも分かる…。けど、──今度こそはって心のどっかで思ってる…」


「…」


「流雨ならどうする?」

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