第26話

ほぼ無理やり、部屋の中に戻され。

私の背後にはユウリはいなかったように思う。



ケイシは苛立ちながらタカに電話をしていた。「今すぐこい」と。


本当に10分程でタカが来た瞬間だった、その鈍い音が聞こえたのは。その音が、殴っている皮膚の音だと気づくのにそう時間はかからなく。



「面倒見てねぇだろうが!!」と、ケイシの怒鳴り声がして。



「サボりやがってちゃんと見とけっつったろ!!」



そういうケイシに、「すみませんすみません」と苦しそうにか弱い声を出すタカに、体の震えが止まらず。


人を殴る音…、蹴るような音が止まらない。苦しそうにずっと謝るタカは、嘔吐くような、声を出す。



その音がやんだとき、「2度目はない、よく覚えとけ」と、もう息さえしてるか分からないタカにそう言った。

タカの声は聞こえない。気絶、してしまったのかもしれない…。






「なあ、お前、ここがどこだか分かるか?極道なんだよ。死体を海に沈めるのも土に埋めるのも、細かくしてそのへんのカラスに食べさせることも出来る」



多分、その台詞は私に言ったものだった。



「今生きてるこの状況を有難いと思え」



生きる状況を…。







「こんな所で、死にたくはないだろ?」

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