第25話
ケイシに髪を引き寄せられる。そのせいで、私も1歩後ろに後ずさり。
「なんです?なんか言いました?」
私の背中に、ケイシの体が当たる。
「女に暴力はどうかと思いますけど」
「女じゃないですよこいつは。売り物です」
「じゃあその売り物を、乱暴に扱っていいんですか?」
「あなたのおじいさんに、任されていますから。俺がどう扱おうと問題ないんですよ」
「さっき西田さんに言いました。この子の相手をしていいかって」
「は?」
「許可を得たんで、その子の喋り相手をしますから離して貰えませんか」
ケイシは、黙る。
〝西田〟という人がどういう人か分からない。けれどもケイシが黙るほどの相手だと分かり。ユウリがお金を返していた人…。
「…残念ながら、俺は組長に命令されてしてますんで。あなたが相手をしてもいいですけど、こっちは売り物と会話をさせる気なんてありませんよ」
「じゃあ、じいちゃんから許可を貰えばいいのか?」
「ご勝手に、まあ、無理だと思いますよ。組長には話を通してますから。なんで西田さんが許可したのか知りませんけど…」
「…少しの間だけだ」
「お帰りください」
「売り物売り物って、その子が借金をしたわけじゃない。それなのに酷く扱うのはどうなんだ。部屋にも何もない、目の見えないやつを置き去りにするのがやり方なのか?」
「これでも優しくしている方なんですけどね?中には売れるまで組の奴らの相手をさせるってところもありますから。相手の意味、分かります?男の相手」
「……」
「これが俺らのやり方なんで、口出さないで貰えますか」
「もう少し優しくしてあげてもいいんじゃないですか、目も、」
「だから、口出すなって言ってんだろガキが」
ケイシの声のトーンが、一気に低くなる。
「部屋に何も無いのは自殺する人間が多いからだ、机1つで人は死ぬんだよ」
自殺させないために…
「こいつで17人目だ、あの部屋に入ったのは。お前がたまたま会っただけ。こいつが消えればいずれ18人目も来る。その度にお前は可哀想だから18人目の世話もするのか?話し相手?」
17人目…
「それとも、お前が借金を返してくれるのか?」
借金を…
「お前のやってる事は、捨て犬を拾おうとしているのと同じなんだよ。何匹も拾って犬屋敷にでもするつもりか?どれだけ金かかるんだよ」
バカにしたように、ケイシが笑う。
「お前といると助かるかもしれない、そんな考えをこいつに起こさせようとするな。中途半端な優しさなんかこいつにとっても残酷な事なんだよ」
残酷…
「こいつかお前のことを好きになったとする、けどこいつが体を売るのは変わらない。好きなやつがいながら他の男に股開く。なあ、分かるか?お前のしてること」
好きな…
「さっさと帰れ、ここはお前みたいな奴が来るところじゃない。──…お前の親は組から抜けた人間なんだ、外の世界しか知らないお前に、ここの事情が分かるはず無いんだよクソガキ」
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