第15話
彼と再び会ったのは、多分、翌日。
タカと一緒に現れた。
見えないけど、もう声で分かってしまう。
「勘弁してください…」と、昨日私に部屋の案内をしてくれた彼に敬語を使うタカは、その人がここに来ることをよく思っていないようで。
「正直、あなたがここに来るの、ダメだって分かってます?……っていうか、ケイシさんに許可とってくれないですか?ここの責任ケイシさんなんで…」
「…そいつが今いないから、聞いてる」
「だから勘弁してください、俺があなたに来んなって言えるわけないじゃないですか…」
「…」
「…ね、ほんと、舐めてません?」
「…西田さんに会いに来るついでだろ」
「その西田さんは何て言ってるんですか、あなたの親はここを抜けた人間なんですから…」
「……もう帰る。けど、帰る前にひとつ聞きたい」
「はあ、なんですか?」
「その子、前は見えていたはずだろ?なのになんで見えなくなってる?」
「さあ、精神的な問題って言ってましたけど?俺も詳しくは知りません。ケイシさんに聞いてください」
「……昨日、あの子が迷子になってた。それだけ言っとく」
「迷子?」
「…」
「………そうですか、ではまた」
扉の閉まる音がする。
扉の向こうに消えた、優しい声を持つ人。
タカは「なんであいつが出てくんの」とイライラした様子で。
タカは私に言う。「昨日、あの男と会ったのか?」って。
私は正直に話した。
「お風呂から帰る最中道が分からなくなり、送ってもらった」と。
タカは「それ早く言えよ…」とブツブツ文句を言いながら、「ケイシさんに言わねぇと」と、床に腰をおろす音がした。
タカは「お疲れ様です、今電話…はい、すみません」と、どこかに電話をしているらしい。多分、相手はケイシ…。
「俺がいない間に、昨日…その…女がオヤジの…関わったみたいで…。あ…はい、そいつです。 こん中で迷ってるところを助けて貰ったようで……すみません…」
「それが、今日も女に会いにきて…今日んとこは帰りましたけど…」
「どうすればいいですか?組じゃないって言われても、あの男に言われたら無理ですって言えないですし…。なんせ…」
「はい、…すみません…よろしくお願いします…」
電話を切り終えたタカは、「……めんどくさいな…」と、低く呟いていた。
私がさっきの男性と会うのは、良くなかったようで。
「お前、もうあの男と関わるなよ?」と、言ったタカは、本当に面倒くさそうだった。
「今頃ケイシさんが、組長に言ってるだろうけど」と。
私は何も喋ってないのに、タカはそれを教えてくれた。
「さっきのやつ、ここの孫なんだよ」と。
「けどヤクザじゃない、ここに口出す権利は無い」と。
「けど、孫だから上手く扱えない」ってことも。
さっきの人は、ここの組織の…身内のようだった。
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