第11話

足が痛いわけじゃない…。

ただ目が見えないだけ。

ということは私のことを知らない。

だけどもここにいるということは、そういう組織の一員。反社会的勢力…。



「すみません…大丈夫です…」



少しだけ会釈したあと、ゆっくりと前へ進む。上手く歩けないからすり足で。

壁を伝う…。

多分、その男性の横を通り過ぎた。

見えるわけじゃないけどそういう雰囲気がする。


今男性と会話をしたから、何歩進んだか忘れてしまい。廊下の壁を頼りに歩く。



転んではダメだから、ゆっくりゆっくりと。



さっき男性の近くを通り過ぎたはずだった、それなのに、「…大丈夫か?」と、また近くで声がし。



再び、顔を男性がいるらしい方に向ける…。

声のトーンは低いのに、私を心配しているようなそんな声。



「怪我?」



怪我?

足を怪我してると思ってるらしい人…



「い、え…」


「手、貸すけど…」




やっぱり優しい声を出す…。

ケイシや、タカとは大違いで…。

それでもやっぱり、得体の知れない人っていう考えが強く。



「…ほんとに大丈夫です、感覚で…分かるので…」


「え?」


「すみません…」


「感覚って…」


「すみません…」




2回謝ると、その人はもう喋ることはなく。

ゆっくりと歩く私を見送ったと思う。


トイレをすませ、部屋に戻る最中も壁を使う私は、まだ前が見えない…。


手のひらを何度も何度も上下させ、ドアノブを探し〝売り物の部屋〟に入る。






──…今は、何時だろうか。




目が見えないと、それさえも分からない。

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