第6話

部屋に食事が届けられた。でも来たのはケイシじゃなかった。昨日、ケイシに耳打ちしてた男性だった。

泣き崩れている私を見ても何も言ってこなかった。もしかしたら関わるなとでも言われているのかもしれない。


水分だけをとり、1回だけトイレに行った。別に誰とも会わなかった。

1晩寝ずにいたからか夕方ぐらいになると睡魔が襲ってきて。布団とは真逆の壁にもたれながら目をつぶった。

破かれた写真は、ブレザーのポケット。

気づけば涙も止まり。



乾ききった目は、〝死にたい〟と思ってた。

それでも死ぬことさえ出来ない…。

明日の朝、私は売られてしまう…。

どこに、

外国に。

男を喜ばせに…。



私は日本に戻ってこれるのだろうか…。





気づけばまた涙が伝っていた。

寝ている私は、その部屋に誰かが入ってきてるのに気づかず。



ふわりと、何かがかけられる。

多分毛布のようなもの。



「この部屋に入る女は、絶対布団使わないのな…」と、膝をおり、私の顔を見ながらそんなことを言う…。

私の寝顔を見たあと、軽くため息を出しながら体を起こしまた部屋を出ていく…。









私は夢を見てた。

それは綺麗な夢だった。

綺麗な夜空の下で、光が舞っている。

川の美しい水音もする。



「──…シイナ」と、優しい声が耳に届き。

その腕に抱きしめれれば、夢なのに、寝ているのに涙が出そうになって。



そんな綺麗な夢が、ゆっくりと終わっていく。

光が消えていく。

温もりが、消えていく。

川の音だけが、流れていた。






まるで川の音が目覚まし時計のように、私は目を覚ました。ぱちぱちと瞬きをする。

瞬きをしているはずなのに、どうしてか視界の中は真っ暗で。

もしかしたら夜で、電気を消されたのかもしれない…そう思って目が暗闇に慣れるまで待った。

まだ起きたばかりだからか、頭がぼんやりとする。一向に、目は暗闇に慣れない。



さすがにおかしいと、あれ?と、泣きすぎて目がおかしいのかなと目をこする。

柔らかい何かが体に当たる。

多分、これは毛布…。

……見えない……。




え?と、冷や汗が流れ、キョロキョロと周りを見渡した。だけど、窓さえも見えない。

月明かりで、少しぐらいは見えるはずなのに…。




膝を立てれば、毛布が体から落ちたような気がした。腕をのばし、手探りで何かを触ろうとすれば、指先に強い衝撃が走る。



「…っ、痛!」と、ジンジンと、突き指したような感覚に、指をさする。

もう一度ゆっくりと指をはわせれば、どうやらそこは壁のようで…。




見えない…。



なんで…、



どうして…。




汗が止まらない。




どく、どく、と、心臓がうるさい…。




壁をつたい、どうにかしてこの部屋から出ようと歩く。



見えない…


見えない…



見えない

見えない

見えないっ!





「きゃあっ!!」




その途中、何かが足を引っ掛け、私は見事に転んだ。多分、感触からして、それは部屋の端にあった1式の布団だった。


手探りで、さわる、分からない…。


焦り、不安、戸惑い…。






見えない……────

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