奈央

第86話

「ごめんね急に」


放課後、あたしは奈央君と連絡を取り合い待ち合わせをした。南高の生徒である奈央君。


やっぱり少し辰巳さんに似て、背も高く、無駄な肉が無いように見えるからか、とても学ランが似合っていて。



「いいよ」


奈央君は少しだけ笑い、「どこか座ろうか」と休憩できる建物をあたしを連れて探し出した。


似てるけど、やっぱり違う。

辰巳さんは、あたしには笑ってくれないから。




持ち帰りができるコーヒーショップで、ドリンクを買った。中で話そうと思ったけど、結構満員だったから、駅近くの花壇のあるベンチに2人で座った。




「話って、隼翔のこと?」


奈央君は甘いものがそんなに好きじゃないのか、アイスコーヒーを手にしていて。



「え?」


「隼翔の話かなって思ってたけど、違う?」



違わなくはないけど。

あたしはただ、放課後に話す相手が欲しかっただけ。もう1人の放課後は嫌だったから。



「·····奈央君、隼翔のことどこまで知ってる?あたしとの関係」



あたしの質問に、奈央君は首を傾げた。


「んー、この前会っただろ?大駕君の店で」


「うん」


「行く前に隼翔に一緒に行こうって言われて。なんで?って聞いたら、お気に入りの女を紹介するって言われたんだよ」



お気に入り·····。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る