第75話

あたしはその足で、大駕の家へと向かった。


この想いを確かめるために。



土曜だし、多分家にいると思った。ガチャっとドアノブを捻っても鍵がかかっているため扉は開かず。


鞄から合鍵を取り出したあたしは、ガチャンとその扉の鍵を開けた。



でも、中には大駕はいなくて。

もしかしたら店にいるかもしれない、そう思ったから、あたしは大駕が働く店へと足を進めた。





まだ早い時間なのに、どう考えてもCLOSEの時間帯なのに、大駕はカウンターのイスに座りながら煙草を吸っていた。


ドアの音で1度こっちを見た大駕は、あたしを見て少し驚いた顔をした後、「暇人かよ」と、呆れたように笑ってきて。



「ねぇ」


「なんだよ」



煙草を吸い終わったらしい大駕は、灰皿でそれを消し、灰皿を洗うためかカウンターの中へと入っていく。



「·····これ、返しに来たの」


あたしはそう言って、さっきまで大駕が座っていたカウンターテーブルに、ソレを置いた。



銀色に光るもの。



「それ、あげたんだけど」


「うん。でも、返す」


「なんで?」



大駕に持っとけって言われて、さっきも使った合鍵。大駕の部屋の合鍵。

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