第65話

お兄ちゃんは、暴走族の元総長。

見た目はそう見えないけど·····。不良の世界にいる男なんだから。


そんなお兄ちゃんの彼女は、不良のふの字も知らない女の子だった。私と違い、笑うとふわってして、感じのいい子。



お兄ちゃんとは、真逆の子。



マジでどこで知り合ったの?って感じ。

まあ、今はもう‘お似合い’って思うけど。




「胡桃、大駕んとこ泊まるんじゃなかったっけ?」



キーレスで、車の鍵を解除するお兄ちゃんは、まだ髪が濡れているのに、乾かすのも惜しいぐらい、早く密葉ちゃんに会いたいらしい。



「·····別に、それより、密葉ちゃん元気なの?よろしく言っておいてね」


「分かった、じゃあ行ってくるな」


「うん、行ってらっしゃい」



大駕の話をしたくなくて、あたしは話を逸らした。去っていくお兄ちゃんの車を見ながら、羨ましいと思った。



違いすぎる世界の密葉ちゃんとお兄ちゃんは付き合えたのに、同じ世界にいるあたしはどうして付き合えないんだろうと。

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