脅迫

第66話

土曜日の昼、あたしは家でゴロゴロしていた。

けど、鳴り止まないスマホに苛立ちを覚える。



「何?」と出れば、『早く来ねぇと家まで行くけど、どうする?』と、嫌な脅迫をされ。



あたしはジャージから私服に着替えて、家を出た。

ちゃんと髪もセットして、化粧もして。




「おせぇな」


族の事務所に行けば、あたしに脅迫してきた男が、呑気にソファで寝転びながらスマホの動画を見ていた。


事務所には隼翔しかいないらしい。



数週間前とは、少し変わった家具の配置。

見たこともない日用品。


それを見れば、ああ、本当に変わっちゃったんだって思う。

同じ部屋のはずなのに、数ヶ月前まではずっとこの部屋で遊んでいたのに、人や物が変われば全く別の部屋に感じてしまう。



「座れば?」


「瀬野(せの)は?」


「夜から来る」



瀬野っていうのは、今の総長の名前で。



夜から来る?



じゃあ今、この部屋にいるのはあたしと隼翔だけ?

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