第56話

「胡桃?」


ほら、実さんも心配してる。なんで黙ってるの?って。

なんで動かないの?って。




「な、なんでもない·····、ちょっと驚いて·····、あ、アイスね。買ってくる··········」



あたしはそう言って、辰巳さん、そして実さんと湊の横を通り過ぎた。




「あいつが素直とかキモイな、何かあったか?」って、湊がウザイことを言ってるけど、あたしは無視して歩き続けた。





アイス·····



コンビニ·····



アイス··········



コンビニ··········。





歩いている途中、大駕とのキスを思い出し、あたしは立ち止まって自身の唇にふれた。


なんともいえない柔らかい感覚·····。



確かに煽ったのはあたしだった。だけど本当にするとは思わなかった。

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