第54話

そう言った大駕に、何も言い返すことが出来なかった。


引き寄せられた体は、また大駕の唇が、あたしの唇と重なってしまっていて。




初めてのキスだった。


ファーストキス·····。







あたしはただ呆然と立ち尽くすだけで、まだ今の状況が信じられなくて。

大駕の舌がゆっくりとあたしの口の中に入ってきた時、その感触にビックリして、ハッと理性を取り戻したあたしは今度こそ胸を思いっきりおした。



馬鹿だから、頭の整理が追いつかない。




「か、かえる·····!」


「胡桃」


「今日は帰る!!」


「待てよ」


「ま、待たない!帰るから!ば、ば、バイバイ!!」



大駕から離れ、カウンターに置きっぱなしだった鞄を手に取った。背後から「胡桃!!」と、大駕の大きな声が聞こえるけど、本当にそれどころじゃなくて。

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