第19話
走り出すクルマからの風景を見ながら、辰巳さんが暴走族を引退する前の日の事を思い出した。
────美優、と、電話越しで話す辰巳さん。
その声はとても優しくて、穏やかで⋯。
私はそれまで1度も辰巳さんが笑った表情を見たことが無かった。でも、辰巳さんは彼女と電話をしている時、笑っていた。
その顔を見て、私に入る隙はないって思った。
あんなに幸せそうにしている辰巳さんは見たことが無かったから。
でも私はやっぱり辰巳さんが好きで。
中学のとき、辰巳さんを見た時から好きだった。
一目惚れだったんだと思う。
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