第88話

「いいよ、矢島君。今日は早く帰って。明日からテストなんだから」


いつもやってる事だしと、ゴミ袋を持ち上げようとした時、横からゴミ袋を取る矢島君の手。




「あんたが案内すればいい話だろ」


案内?私が?

それって私が持っていくのとどう違うの?って思ったけど。


矢島君が掃除を手伝ってくれるっていう行為が嬉しかった。


ゴミ袋を持って教室を出ていく矢島君を追い、私は彼の横に並んだ。

彼の横顔を見つめる。

ほんとに綺麗な顔⋯。どのパーツもすごく整っていて。そのひとつの唇にキスされたことを思い出した私は、罪悪感からか変な気分になった。



「先生さあ、下の名前なに?」


「え?」



突然矢島君が私の方を向いて、驚く。



「名前」



名前?私の?

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