第18話

「俺ん時は高2ぐらいで進路会とかやってましたけどね。ここ、高3なってからそういうの決めていくじゃないですか。今から決めるって、遅くないですか?」


「3年生からするのは、あんまり進学する子がいないからだと思いますよ」


「え、そうなんすか?」


「勉強とか好きじゃない子が多いから。就職を選択してフリーターとか、卒業してからも遊ぶことが多いんです」


「へぇ」


「頭良くて、行きたい大学があるっていう子は、もともとこの学校には来ませんから」



誰がどう見ても、不良校のゆるい学校。



「なるほど」


「まあ、でも、さっきの遅いって話はちょっと違いますよ」


「え?」


「将来を決めるは大事なことだから、ちゃんと考えて決断しないと。早く決めすぎて後悔しちゃダメだから。進路を決めるのは遅くてもいいの」


「へえ⋯」


「みんな誰でもすぐ決まれば、こんな進路‘希望’調査票なんていらないのよ」



私はそう言って、『矢島』としか書かれていない紙を見つめた。

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