第16話

「決まってなくても、書いて」


「はあ?」


「あのね、何人かにも言ったけど、‘希望’なの。この紙で卒業後が決まるわけじゃないの」


「⋯」


「就職か進学、迷ってるなら両方書けばいい。どの学校かで迷っているそのまま書けばいい。資格を取りたいならそれを書けばいい。分かった?」


「⋯」


「矢島君には、まだ選ぶ時間があるんだから」


「⋯」




矢島君は無言のまま、紙を受け取り。


受け取ったことを確認した私は、「じゃあまた明日ね、さようなら」と、教室を出でようとして⋯


ある事を思い出した私は、矢島君に振り返り、



「鍵、修理したからもう使えないからね」



この前の仕返しだと、笑ってそう言った。

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